ATAWI 家紋資料室

土地から読む / 静岡市

二引両と葵紋、駿府に伝わる家と品。

今川家の二引両と赤鳥の馬印、家康に伝わる葵紋の薙刀拵、三葉葵円紋の具足櫃。寺社・所蔵品・修理記録から静岡市との関わりを読みます。

紋帳と和綴じの本、筆を描いた挿絵
紋帳をひもとき、名と出典をたどる。

静岡市 / 領主と寺社・古典籍 / 資料確認 2026年11月5日

二引両――今川家と、駿府に残る氏輝・義元の記録

静岡県の「しずおか遺産」公開資料は、今川家の家紋を二引両と記し、丸の中に二本の横帯を配した図を載せています。足利将軍家の血筋にある今川家について、領国支配の体制を整えた氏親と、最盛期を築いた義元を紹介しています。二引両は、駿府を拠点としたこの家を知るための具体的な紋です。[1]

市内で人物の記録と結び付く場所の一つが、葵区大岩町の臨済寺です。静岡市の文化財案内では、義元の兄・氏輝の菩提寺とされ、今川家墓所や義元・雪斎の木像が紹介されています。駿河区丸子の柴屋寺は、今川義忠・氏親に仕えた連歌師宗長ゆかりの寺。家紋から使用家を知り、当主の墓所や文化を支えた人物へ、土地の中で関係を広げられます。[2]

赤鳥は馬印――二引両と役割の異なる今川の印

櫛のような形をした「赤鳥」も今川氏の印として知られますが、県の資料は二引両に「家紋」、赤鳥に「馬印」と別々の説明を添えています。丸と横帯の二引両と、櫛の歯に似た赤鳥を、一つの図柄の別名として扱わずに見比べられる資料です。[1]

二引両を使った家と静岡浅間神社との関係は、静岡市の案内にも記されています。神社は今川氏の歴代当主から保護を受け、伝来の宝物の一部は静岡市歴史博物館へつながっています。神社の現在の社殿は1804年(文化元年)から約60年をかけて再建されたものとされます。今川氏との関係の古さと、いま目にする建築の年代を、同じ時点のものとして扱わずに読むことができます。[2]

葵紋蒔絵薙刀拵――家康在世から伝わる品

駿河区根古屋の久能山東照宮博物館は、「葵紋蒔絵薙刀拵」を収蔵品として公開しています。拵は、刀身とは別に、武器を装い保護する外装のことです。同館の個別解説では、家康在世の時から伝わる「薙刀 無銘直江志津」の拵とされ、刀身は作風から美濃の志津兼氏一派の作と考えられています。ここでは、葵紋が付く外装、刀身の作者に関する判断、家康との伝来を、一点の資料の中で読み分けられます。[3]

博物館がまとめて保管する家康関係資料の中心は、駿府で生活した家康の日常品です。同館の説明では、それらが一か所に伝わる点も評価され、1979年(昭和54年)に重要文化財へ一括指定されています。葵紋のある品を静岡で見る意味は、徳川家を示す図だけでなく、駿府での暮らしから久能山へ伝わった品々の集まりにもあります。[3]

三葉葵円紋の具足櫃――甲冑を守る箱にも紋がある

甲冑の本体だけでなく、それを納める箱にも徳川家の紋が残ります。小西美術工藝社による久能山東照宮の保存修理記録は、具足櫃の金梨子地に牡丹唐草を描き、各面の中央に三葉葵円紋を蒔絵した意匠を説明しています。器面全体の植物文様と、中央に置かれた家の紋を区別して見られる実例です。[4]

記録の対象は金溜塗具足・白檀塗具足・具足櫃で、工期は2015年4月22日から2016年3月31日。具足櫃は解体・洗浄のうえ、弱った漆の塗膜を強め、失われた梨子地や金地を補う処置を受けました。家紋の付いた箱が残る背景には、こうした修理の仕事もあります。この修理年は、箱の製作年や紋を初めて用いた年とは異なります。[4]

増善寺の葵紋付軍配――今川の菩提寺に伝わる江戸の品

葵区慈悲尾の増善寺は、静岡市の案内で氏親の菩提寺として紹介され、氏親の木像や義元の発給文書が伝わります。一方、静岡市歴史博物館の2026年企画展「没後五〇〇年 戦国大名 今川氏親」の資料一覧には、同寺所蔵・同館寄託の「葵紋付網代軍配団扇」が52番として掲載されています。年代は江戸時代です。[2][5]

今川氏の菩提寺に葵紋の品が伝わることは、寺が一つの時代の品だけを残す場所ではないことを示します。同じ一覧の51番には「硯(徳川家康拝領)」も載っていますが、52番の軍配の使用者や贈り主は記されていません。家康に関わる硯の伝来を、その隣の葵紋の軍配へ移して説明せず、それぞれの品名と記録に沿って紹介します。[5]

古典籍で、紋の名前と衣服の意匠を読む

静岡市立中央図書館の「家紋をまとう―古典籍にみる時代のファッション―」は、1693年刊の『女中達紋尽 男・女』や、雛形本・紋所帳・武鑑を紹介する展示案内です。予定期間は2026年11月10日から2027年2月7日で、11月5日の確認時点では開催前です。上の所蔵品・修理記録の説明とは別に、これから原本を読むための資料案内として残します。[6]

家のしるしを、次へ

土地の記録から、我が家の記録へ。

紋帳の名前が見つかったら、書名・刊行年・頁・図の位置も一緒に記すと、後から家族が同じ図を確かめられます。

記録は相談のお申し込みなしでも作成できます。記入内容は画面内で処理し、アクセス計測へ送りません。

ここからは県内の関連資料の紹介です。下の不動産相談の対応地域は物件の所在地でご確認ください。

住まいと、家の記憶

家を大切にするからこそ、
不動産を売却する。

家紋のある家を大切に思う気持ちは、住まいを手放したあとも続きます。
残したい紋付や写真、ご家族で集まる時間も含めて、これからを考えてみませんか。

富士ヶ丘サービスの窓口へ移動します。対象は磐田・袋井・掛川・菊川・御前崎・湖西・浜松の7市と森町にある物件。所在地でご確認ください。実家カルテは市町村・町名・番地(地番)と連絡先を用意してお申し込みください。

電話 0538-31-3308

記録用紙は相談のお申し込みなしでも印刷できます。地域外の方は、ご家族の記録を地元の相談先とのお話にご活用ください。

出典と、読み取れる範囲

  1. 静岡県(レガシズ・しずおか文化財ナビ)「今川一族と「山西」の人々をつなぐ構成資産」

    PDF3頁・二引両の家紋図、赤鳥の馬印図、氏親・義元の説明

    原図のラベルを目視し、家紋と馬印を区別。現在の市民の使用率は示しません。

  2. 静岡市「今川氏ゆかりの地を訪ねて」

    静岡浅間神社、臨済寺、柴屋寺、増善寺

    市内の寺社と人物との関係。増善寺の説明には氏親の当主代数に不一致があるため、本稿では代数を引用しません。

  3. 久能山東照宮博物館「収蔵品」

    「葵紋蒔絵薙刀拵」の拡大画像に付く個別解説、徳川家康関係資料

    薙刀の刀身と拵、在世以来の伝来と作者の推定を区別。常設展示中であることを保証するものではありません。

  4. 小西美術工藝社「久能山東照宮 保存修理」

    金溜塗具足・白檀塗具足・具足櫃の修理記録、三葉葵円紋と修理工程

    修理担当者の公表記録。2015〜2016年は工期であり、製作年や家紋の起源年ではありません。

  5. 静岡市歴史博物館「企画展「没後五〇〇年 戦国大名 今川氏親」展示資料一覧」

    PDF2頁・第5章、51番の硯と52番の葵紋付網代軍配団扇

    52番は江戸時代・増善寺所蔵(同館寄託)。51番の拝領者を52番へ転用しません。

  6. 静岡市立中央図書館「家紋をまとう―古典籍にみる時代のファッション― 開催案内」

    2026年10月22日掲載・展示資料と会期

    調査時点では開催前の案内です。古典籍の原図を実見済みとはしていません。